・人身取引対策への取組
人身取引は,重大な人権侵害であり,人道的観点からも迅速・的確な対応を求められてい る。これは人身取引が,その被害者,特に女性と児童に対して,深刻な精神的・肉体的苦痛 をもたらし,その損害の回復が困難であることによる。また,国境を越えて行われる犯罪で あるため,国際社会の関心も高いものとなっている。 政府は,平成16年12月,関係府省庁において「人身取引対策行動計画」を,21年12月に は犯罪対策閣僚会議において「人身取引対策行動計画2009」をそれぞれ策定し,これまで政 府一体となった取組を推進してきたところ,より強力に総合的かつ包括的な人身取引対策に 取り組んでいくため,26年12月,同会議において「人身取引対策行動計画2014」を策定し た。そして,平成27年5月には,人身取引対策関係閣僚から成る「人身取引対策推進会議」 の第1回会合を開催するなど,現在,同会議を中核に関係府省庁が連携しながら人身取引対 策への取組を進めている。 また,入国管理局においても「人身取引対策行動計画2014」に基づき,関係機関との協力 体制を一層強化するなどして人身取引の防止に努めるとともに,潜在化している可能性のあ る人身取引事案を把握し,人身取引の撲滅と被害者の適切な保護に積極的に取り組んでいる ところである。
・人身取引被害者の保護
入国管理局では,人身取引被害者の立場に十分配慮し,被害者保護の観点から在留期間の 更新や在留資格の変更を許可しており,また,被害者が不法残留等の入管法違反の状態にあ る場合には在留特別許可を与えるなど,被害者の法的地位の安定化を図っている。 入国管理局が平成26年に人身取引の被害者として保護(帰国支援を含む。)の手続を執っ た外国人は9人(前年12人)となっており,国籍・地域別の内訳は,フィリピン7人(前年 6人),タイ1人(前年6人)及びルワンダ1人となっている。 なお,被害者9人のうち,在留資格を有していた者は5人(前年8人),不法残留等入管 法違反となっていた者は4人(前年4人)であり,入管法違反となっていた被害者全員につ いて在留特別許可を行った。 被害者数は,入国管理局が統計を取り始めた平成17年に115人保護した後大幅に減少し, ここ数年は10人前後で推移しているが,これは,人身取引対策行動計画の下,政府一体と なって対策に取り組んでいることや,同年以降に行った「興行」の在留資格に係る上陸基準 省令の見直しや厳格な上陸審査の実施など人身取引防止・撲滅への取組が一定の効果を上げ ているためと考えられる。
・人身取引加害者の強制退去
平成26年に,警察庁,法務省,最高検察庁,厚生労働省及び海上保安庁は「人身取引対策 関連法令執行タスクフォース」を設置し,人身取引関連事犯の取締りを徹底すべく,一層の 情報共有及び連携を図っているところ,同年に入国管理局が人身取引の加害者として退去強 制した外国人は2人(前年1人)であり,その国籍はタイとなっている。
(入管管理局ホームページ 入管白書「入国管理局」-27年版より)