○ 研修・技能実習制度は,我が国で培われた技能・技術・知識の開発途上国等への移転を図 り,当該開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に寄与することを目的とする制度である が,近年,一部の受入れ機関において,制度の趣旨を十分に理解せず,研修生や技能実習生を 低賃金労働者として扱うなど,不適正な受入れが行われている事案が増加し,また,傘下の企 業に対する指導・監督が不十分な受入れ団体の存在や研修生をあっせんして不当な利益を得る ブローカーの存在も指摘されていた。 このような状況に対処するため,平成22年7月に現行の技能実習制度の運用が開始され, 実務を伴う研修を行う場合,原則として雇用契約に基づき技能等修得活動を行うことを義務付 け,当該活動を行う期間中の技能実習生が労働基準法や最低賃金法等の労働関係法令上の保護 を受けられるように措置するとともに,団体監理型の受入れにおいて,従来,1年目の研修に ついてのみ団体が監理を行っていたところを,2年目以降の技能実習についても団体の責任と 監理の下で行うこととした。 現行制度では,専門的な知識を有する者による技能実習生の法的保護に必要な情報に係る講 習の実施を義務付け,さらに,監理団体の指導・監理・支援体制を強化するため,監理団体の 要件として,①監理団体の職員等が,1か月に1回以上,実習実施機関に赴き技能実習の実施 状況を確認・指導すること,②監理団体の役員が,3か月に1回以上,監査を実施し,その結 果を地方入国管理局へ報告すること,③相談員の設置などにより監理団体が技能実習生からの 相談に対応する措置を講じていること,などを規定している。 また,平成24年11月1日に,上陸基準省令等を改正し,技能実習生の保護の強化及び適正な 技能実習制度の運用を図った。具体的には,①技能実習の適正な実施を妨げる不正行為を行っ た実習実施機関等に対する新たな技能実習生の受入れを認めない期間の始期を明確化,②監理 団体等について過去5年間に虚偽申請に関与していた場合に受入れを認めないとすること,③ 実習実施機関や監理団体が不正行為を行った場合は直ちに地方入国管理局等に対し不正行為事 実を報告することを要件とすること等の改正を行ったものである。 さらに,平成25年12月に,同年4月の行政評価・監視結果報告書による指摘を受けて,監理 団体による監査の適正化を図るため,監査の視点,手順,方法等をより具体的に示すととも に,監査が適切に行われなかった場合に適用される不正行為について具体化・明確化を図るこ ととし,「技能実習生の入国・在留管理に関する指針」を改訂した。
○ 入国管理局では,研修・技能実習に関し不適正な行為を行った機関に対しては,「不正行 為」の通知を行い,法務省令の規定等に基づいて,不正行為の類型に応じ,当該機関が研修 生・技能実習生を受け入れることを,5年間,3年間又は1年間認めないこととしている。平 成26年中に「不正行為」を通知した機関は241機関であった。 これを受入れ形態別に見ると,全て団体監理型での受入れ機関であり(企業単独型で受け入 れた機関はなし。),受入れ機関別では,監理団体が23機関(9.5%),実習実施機関が218機 関(90.5%)となっている。「不正行為」の類型別では,「賃金等の不払」,「講習期間中の業務への従事」,「技能実 習計画との齟齬」の順に多く,この3類型で全体の70.9%を占めている。 このように,研修・技能実習については,不適正な行為に及ぶ機関もいまだ相当数存在して いることから,より適正な制度の運用に資するよう,引き続き現行制度導入後の状況把握に努 めることとしており,関係機関との連携を密にし,実習実施機関などに対する実態調査を積極 的に行い,必要に応じて改善を求めていくこととしている。(入国管理局ホームページ 入管白書「出入国管理」ー27年版より)